訪れて食べて飲んで身体整う!「今庄宿」でスローなプチ発酵旅

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福井県南越前町今庄地区は古くから交通の要衝で、江戸時代には北国街道沿いの宿場町として北陸と京、江戸を行き来する旅人が訪れ栄えました。

幾重にも連なる南条山地は北陸随一の難所で、どの峠越えの道も今庄を経由していたため、旅人たちは「今庄宿」で心身を癒し峠を越えていったそうです。

全長約1km程の道沿いには、今もなお町屋や商家、旅籠、古い歴史を持つ酒造などが立ち並び、風趣に富んだ景観を見せてくれます。まるで江戸時代にタイムスリップしたかのようなレトロ散歩が楽しめます。

今庄宿がある今庄地区は、海はなく山間の盆地で、町の中央に日野川が流れ、豊かな自然に恵まれています。そんなこの町では古くから地域の気候や風土、先人たちの知恵により生まれ育まれてきた食文化「発酵食」があります。発酵を利用した日本酒や味噌などが製造され、その歴史を刻んできました。

今回は今庄宿発の選りすぐりの発酵食をピックアップしてご紹介します。試飲や見学もできる店もありますのでぜひ訪れてみてください。知って、美味しく楽しく心身ともに元気になりましょう。

さあ、プチ発酵旅を楽しみましょう。

まずは、老舗の酒造めぐりからスタートです。

雪国・今庄地区は良質の米と山々から湧き出る清冽な天然水、そして寒冷な気候、清浄な空気に恵まれた、まさに美味しい発酵食が生まれる条件が揃う地。上質な酒造りに適した環境で、この土地、酒蔵、職人の技でしか出せない味わいの酒を生み出しています。宿場町として栄えていた当時は、街道を往来する旅人の喉を潤し、時代ごとに地域の人々に親しまれてきました。

 

かつては15軒の酒屋が軒を連ねていましたが、現在は4軒が造り酒屋を続けており、個性豊かで美味しい酒が揃っています。

 

 

 

 

福井の恵みが重なり響き合う酒造り「畠山酒造」

 

自然風土と手仕事で醸すふるさとの酒

天保6年(1835)創業の「畠山酒造」は、地酒「雪きらら」と「百貴船」「智慧の水」の蔵元です。かつて旅籠を営み、宿泊客に自家製のにごり酒を振る舞ったのが酒造りの始まりといいます。日野川の伏流水と今庄の酒造好適米、福井の酵母にこだわる地元指向の地酒蔵で、手造りの美酒を造ることにこだわり、鑑評会で優等賞を5年連続受賞するなど、良質な酒を醸造しています。

 

「味の決め手は麹造り。運を天に任せて自然の力を信じて仕込んでいます」と話すのは、伝統を引き継ぐ11代目杜氏の畠山拓也さん。

「夏は暑く冬は寒いという盆地ならでは気候が酒造りに適しているのでしょうね。厳しい寒さにより、蔵に住みついている酵母が発酵を促し、米が酒に変化する神秘的な酒造りが繰り返されています」と語ります。

 

今庄は豪雪地帯であることから命名された代表酒「雪きらら」は、まさに風土と気候を反映した酒。今庄宿に訪れた際にはぜひ味わってください。

▲大吟醸「雪きらら」は華やかな香りの淡麗で上品な味わい。純米大吟醸は口に含むと芳醇な旨みが広がり後味すっきりで穏やか

売店で酒の試飲ができ、事前予約により仕込み時期の11月から3月の間以外は酒蔵見学も受け付けています。

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【店舗情報】

畠山酒造

福井県南条郡南越前町今庄109-14
TEL/0778-45-0028

営業時間/8:00~19:00
定休日/不定休

http://yukikirara.co.jp

 

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蔵元・善六「北善商店」

 

 

一滴一滴に手作りの技と心が生きる酒

享保元年(1716)創業。旅人や商人が藩札と金銀を両替する福井藩御札場を務めた北村家が構えた蔵元「北善商店」。仕込み水は、雪深い今庄の周囲の山から湧き出る珪石層を潜り抜けた天然の軟水。地下約40mある自家井戸から組み上げています。凄烈な水とともに米どころ福井の良質な酒造好適米、そして雪国の清新な気候と昼夜の厳しい寒暖の差という酒造りに最適な環境のもと醸造しています。

 

「味を決めるのは麹、香りは酵母。いい酒を造るには、麹と酵母がバランスよく働くことが大事」と語るのは蔵元杜氏を務める10代目の北村啓泰さん。現在は家族経営で、麹作りから酒の搾りまで、長年の経験と感性で造ります。目指しているのは、淡麗辛口でスッキリとした飲みやすい酒造りといいます。

▲聖乃御代・純米酒「北国街道今庄宿」と無濾過生原酒で酵母が生きているしぼりたて「一番蔵出し」

 

ブランド名「聖乃御代」は戦後、清らかな水の里の平和を祈り、京都の高僧が命名したと伝わります。今日の平和な時代と今庄宿の歴史を思い浮かべながらぜひ味わってみてください。

売店には雪国の自然の恵みから生まれた酒と、蔵元の名が入った徳利などが並びます。ビンなどがまだ普及していない時代、旅人や地元の人々は通い徳利を持って店を訪れ、量り売りをしていたそうです。

ノスタルジックさを残す酒蔵。予約をすれば酒蔵見学ができ、もちろん試飲もできます。

 

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【店舗情報】

(酒蔵)株式会社 北善商店

福井県南条郡南越前町今庄81-3
TEL/0778-45-0016

営業時間/9:00~17:00
定休日/不定休

http://www.zen-roku1716.com

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福井県内最古・江戸初期創業「堀口酒造」

風土と伝統を感じて味わえる地酒

蔵元「堀口酒造」の歴史と伝統は長く、福井県内で最も古い元和4年(1618)創業。家族で営み、現代表で杜氏の堀口恒平さんは15代目にあたります。代々、地元福井の酒造好適米と水にこだわり、伝統的な醸造を育んできました。

 

「今庄の冬は雪が多く、空気が澄んでいます。周りを囲む山は珪石層のため、谷川の水は軟水。それが発酵力にも影響しているのでしょうね。そうした恵まれた自然環境で育まれてきたのがうちの酒です」と堀口さんは話します。

堀口酒造ではほぼ手作業で製造し、5年かけて熟成させた古酒をメインに販売。代々、淡麗辛口で、酸味の少ない上品な味を目指しています。

 

「秘伝のタレのように、継ぎ足ししながら熟成を待ちます。うちの酒は、和食から洋食まで様々な料理によく合いますよ」と誇らしげに語ります。

 

▲代表酒・古酒・特別純米酒「鳴り瓢」と新酒「にごり酒」

 

 

代表酒「鳴り瓢」は、幕末の福井の歌人・橘曙覧の歌「とくとくと 垂りくる酒の 鳴り瓢 うれしき音を さするものかな」にちなんで名付けられました。風土ととも受け継がれた酒を、ぜひ楽しんでみてください。

 

 

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【店舗情報】

堀口酒造

福井県南条郡南越前町今庄76-1-2
TEL/0778-45-0007

営業時間/9:00~18:00
定休日/不定休

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今庄宿の4蔵を飲み比べたいあなたに!

歴史が醸す「四蔵元物語」

 

 

今庄宿で江戸時代から愛されている蔵元4社の純米酒セットをお土産にいかがでしょうか。

この地を代表する畠山酒造(玉や)の「雪きらら」、北善商店(善六)の「聖乃御代」、堀口酒造(大屋)の「鳴り瓢」、そして白駒酒造(中大)の「白駒」がそれぞれ気軽に楽しめます。

 

飲み比べるのもよし、じっくりと味わうもよし!発酵まちめぐりの手軽なお土産におすすめです。今庄宿で生まれ、育まれた銘酒をぜひ味わってみてください。今庄駅のお土産販売所と、道の駅南えちぜん山海里で購入できます。

 

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【店舗情報】

今庄駅お土産販売所

福井県南条郡南越前町今庄74-3-1
TEL/0778-45-0074(今庄観光協会)

営業時間/9:00〜17:00
定休日/年中無休

https://www.imajo-syuku.com/売店おすすめ土産/

 

【店舗情報】

道の駅南えちぜん山海里 MARKET Me

福井県南条郡南越前町牧谷39-2-2
TEL/0778-47-3690

営業時間/9:00〜20:00
定休日/年中無休

https://kineno-nanjo.com

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酒蔵めぐりを楽しんだ後は、発酵をより深く知る「酒造り体験」も楽しみの一つです。発酵旅がさらに充実しますよ。

今庄宿の酒蔵では、毎年11月〜2月末頃迄(12月を除く)、酒造り体験が楽しめます。ここでしか味わえない体験を通じて、発酵と酒造りの奥深さをぜひ体感してみては。

 

体験は1日から可能ですが、おすすめは4日間での参加です。酒の仕込みは4日間通して行うため、酒造りの一部始終に触れられます。

 

【詳細・問合わせ・申込み先】

地域まるっと体感宿 玉村屋

福井県南条郡南越前町今庄82-10

※問い合わせはWEBフォームから受付 ※予約はW E Bから受付

https://tamamuraya.jp

 

 

 

老舗みそ蔵「吉五商店」

手間ひまかけた天然醸造、木桶仕込みの味噌

 

創業明治33年(1900)の「吉五商店」では自家醸造によるみそを製造、販売しています。美味しく変わらぬ味を届けるため、代々受け継がれる伝統的製法を守り、麹作りから、大豆煮、仕込み、発酵、熟成まで全て職人による手作業で造っています。

 

原料となる大豆は主に福井県産を使用し、米は時期により異なりますが地元産のものを多く使っています。吉五商店のこだわりは、木桶仕込みと長期天然醸造です。麹が繁殖するにもみそが発酵するにも温度差が重要ですが、「うちの蔵には冷暖房設備はなく、温度調整はせず自然の気温で造っています。今庄だから天然醸造ができて、この味が出せるんだと思います」とみそ造り歴約40年、4代目の吉田良治さんは話します。

 

120年以上大事に守ってきた木桶と蔵。そこには、みその味を造る、酵母菌、乳酸菌などの有益な菌が長い年月を経て住み着いています。長い年月を積み重ねてきた木桶で、約1年から1年半、長くて2年もかけてみその熟成、発酵を進めます。

「木桶に仕込んで、空気をしっかり抜いてから蓋を閉め重石をのせた後は、微生物まかせですね」と吉田さん。出来上がったみそは、この木桶だからこそ出せる味の深みと広がり、香りとコクを醸し出しています。こだわりのみそを造り続けている吉田さんは「うちの味噌は生きていますよ」と胸を張ります。

 

米麹をたっぷり使用した昔ながらのみそは、つぶとすりの2種類あります。他にも醤油5種類を販売。豆腐、厚揚げ、麹も製造、販売しています。

 

 

新鮮な味噌の計り売りもしています。芳醇な香りで、大豆本来の風味が味わえる、スッキリとした昔ながらの味。保存料、無添加、着色料は使っていません。

 

 

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【店舗情報】

吉五商店

福井県南条郡南越前町今庄109-25
TEL/0778-45-0025

営業時間/9:00~19:00
定休日/不定休

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老舗の梅肉専門店「高野由平商店」

300年以上愛され続けている由緒ある銘品

 

発酵プチ旅の最後はこちら。「梅肉」の大きな看板が目を引く「高野由平商店」で、江戸時代から製造している「甘露梅肉」。当時「大黒屋由兵衛」として旅籠を営んでいた時に、若狭国小浜藩主が土産に携えた若狭の西田梅を加工し、宿泊した旅人に振舞ったのが始まりと伝わります。高野家の当主は代々この製法を残し、味を変えないように努めています。

▲「甘露梅肉」と「紅梅液」

 

 

この梅肉には、天然の梅酵母が生き続けているそう。

 

「梅を砂糖漬けにして1ヶ月程経つと、蔵全体からプチプチと発酵する音が聞こえるんですよ。泡が吹き出すんです」と話すのは、10代目の高野義昭さん。

 

土蔵には江戸時代から使用している越前焼きの梅甕と壺が約80あります。長い歴史を歩んできた梅肉から梅酵母が採取されたのは平成22年(2010)のことだといいます。梅酵母を採取した福井県立大学の研究グループの教授からは「この蔵には天然の良い酵母が住んでいる」と評価されたそうです。

 

梅肉の製造は、約3年以上の月日を要します。良質な福井県若狭町の福井梅を約1ヶ月間、重石をのせて砂糖漬けにします。できた果汁と実を別々の甕と壺に分けて密封し3年以上、蔵の中で熟成させます。熟成した実は一つ一つ手作業で丁寧に種を取り、紫蘇、刻み生姜、鹿児島県種子島産の砂糖を加え、練り上げて出来上がり。添加物は一切使わず、自然の美味しさ。ご飯や冷奴など和洋どんな料理にも合う、甘酸っぱく上品な味の万能調味料です。その梅肉作りの工程で生まれるのが梅シロップの「紅梅液」です。

 

「美味しく仕上がるのはやはり、今庄の気候がいいんですよ」と高野さんは語ります。「一子相伝梅一筋」で受け継いできた味、そして伝統と素材や製法へのこだわり。もとは旅人相手に始まったもてなしの味は、きっとこれからも多くの人々を楽しませていくのでしょう。

 

 

梅肉、紅梅液とも試飲・試食してから購入することができます。

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【店舗情報】

高野由平商店

福井県南条郡南越前町今庄109-17
TEL/0778-45-0003

営業時間/8:00~18:00
定休日/不定休

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発酵食は現地へ訪れて自分の目と耳、そして舌で確かめるのが一番です。

気になる発酵食があれば、ぜひ「今庄宿」に足を運んで味わってみましょう。美味しい出会いを楽しみ、豊かな自然に癒され、歴史あふれる町並みをのんびり散策してみてください。きっと健やかに心も身体も整うはずです。

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